韓国留学の際の賃貸契約は?保証金や契約条件について解説
更新日 : 2025/10/10
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韓国での賃貸契約は、「チョンセ」と「ウォルセ」という制度が一般的です。日本とは異なる制度のため、保証金や契約方法・手順を正しく理解しておく必要があります。その他にも、エリア別の家賃相場や賃貸契約時に起こりやすいトラブルへの対処法を知っておくことで、韓国での留学生活をより快適に過ごせるでしょう。本記事では、韓国留学における賃貸契約について詳しく解説します。
韓国の賃貸契約の基本形態
チョンセ制度
チョンセとは、月々の家賃の代わりに一定の金額を保証金として家主に預ける、韓国特有の賃貸契約制度です。保証金は一般的に高額ですが、契約終了時に全額返還されます。契約期間は通常2年間で、賃借期間中は入居当時の住宅状態を維持する必要があり、内装のリフォームを行いたい場合は家主の同意を得なければいけません。この賃貸制度では、家主は預かった保証金を投資や運用に回して収益を得ることができ、入居者は月々の支出を抑えられるという利点があります
ウォルセ制度
ウォルセとは、所定の保証金を家主に預けたうえで毎月の家賃を支払う、日本の賃貸契約と似た制度です。チョンセと比較して保証金額が安く初期費用を抑えられるため、留学生はウォルセを選択するケースが多く見られます。また、チョンセと同様に、保証金は契約終了時に全額返還されます。ただし、家賃の未払いがある場合は、その分が保証金から差し引かれるためご注意ください。
その他には、保証金の代わりとして契約期間分の家賃を一括で前払いする「サグルセ」という制度もあります。チョンセやウォンセと違い、契約時に保証金ではなく家賃をまとめて支払うため、契約終了時の返金はありません。月々の家賃支払いが不要になる一方で初期費用が高額になるため、一般的に留学生には適しておらず短期滞在者向けの制度と言えるでしょう。
韓国の住居タイプと特徴
学生寮
大学が提供する寮は、留学生におすすめの住居タイプです。家賃が比較的安く、光熱費やインターネット料金が含まれている場合もあるため、生活コストを抑えることができます。また、同じ大学の学生と交流できる点も大きなメリットです。ただし、定員に限りがあるため、希望者全員が入居できるとは限りません。大学寮への入居を希望される方は、留学先の大学に直接お問い合わせください。
ワンルーム/オフィステル
ワンルームは日本の1Kアパートのような部屋タイプで、オフィステルはワンルームマンションに近い部屋タイプです。どちらの物件も、生活に必要な家具や家電が備え付けられており、日本で一人暮らしをするイメージに近い環境です。特にオフィステルは、韓国の都市部に多く立地しているため、交通の便が良く生活の利便性が高い点が特徴です。
コシウォン(考試院)/コシテル
コシウォン(考試院)は、小さい個室と共用スペースで構成された集合型の宿泊施設です。部屋には勉強机とベッドのみが設置され、キッチン、シャワー、トイレなどは共用スペースを利用します。一方で、コシテルはコシウォン+ホテルを意味し、コシウォンよりも設備が充実している場合が多いです。もともとコシウォンは、受験生が勉強に集中するために作られた施設ですが、家賃の安さと契約のしやすさから現在では留学生や生活費を抑えたい社会人にも広く利用されています。
ハスク(下宿)
ハスク(下宿)は、一般家庭の一部を間借りする住居形態で、食事が提供される場合もあります。韓国語でのやり取りや現地の人との交流ができるため、語学力を伸ばしたい留学生におすすめです。ただし、他の住居形態と比べてプライバシーが制限されることや、共同生活におけるルールが設けられている点などから、自由度はやや低いと言えるでしょう。ハスクを検討している方は、事前に家主とルールについて十分に確認しておくことが大切です。
韓国の賃貸契約にかかる費用
保証金
韓国では賃貸契約時に保証金が必要です。保証金は日本の敷金のような役割を果たし、賃貸契約時にまとまった金額を大家に預ける費用です。この保証金制度があるため、韓国では賃貸契約時に保証人や保証会社が不要となっています。ソウル市内のワンルームをウォルセで契約する場合、保証金の相場は約50万~100万円です。一方、チョンセ契約では数百万~数千万円規模の高額な保証金が必要となるため、留学生には適していないと言えるでしょう。なお、保証金は退去時の清算後、特に問題がなければ全額返金されます。
月額家賃
ウォルセで契約した場合は、保証金に加えて毎月の家賃を支払う必要があります。ソウル市内のワンルームやオフィステルの家賃相場は、おおよそ4~8万円以上が一般的です。ソウルなどの主要都市では保証金や家賃が高めに設定されていますが、地方都市を選ぶことで初期費用を抑えることが可能です。また、ソウル市内でも江西区や江東区といった郊外エリアを選ぶことで、比較的安価に部屋を借りられます。
管理費
管理費とは、建物の共有スペースの維持費として毎月支払う費用のことです。維持費には、共有スペースの清掃や警備、廊下、階段、エレベーターの電気代などが含まれます。管理費の相場は、一般的に5,000円~8,000円程度です。なお、通常は管理費に光熱費(電気・ガス・水道代)は含まれておらず、別途ご自身で支払う必要があります。ただし、物件によっては家賃や管理費に光熱費が含まれている場合もあるため、契約時にしっかり確認しましょう。
その他にも、不動産会社を通じて物件を探した場合には、日本でいう仲介手数料が発生します。また、インターネットの開設に別途費用がかかる場合もあるため、物件選びの際にはその点にも注意が必要です。
韓国留学生が賃貸契約できる条件
外国人登録証を取得していること
留学生が韓国で賃貸契約を結ぶには、学生ビザ(D-2など)の正当な在留資格と外国人登録証が必要です。韓国に90日以上滞在する場合は、外国人登録証の取得が義務付けられており、これは韓国における身分証明書の代わりとなります。そのため、韓国入国後は速やかに手続きを行いましょう。その他、物件によっては在学証明書や保証金の支払い能力を証明する書類の提出を求められる場合もあります。
保証人の有無を確認すること
韓国には保証金制度があるため、保証人を立てずに賃貸契約ができる物件が多くあります。ただし、外国人留学生は保証人を求められるケースもあります。そのような場合は、保証人不要の物件を探すか、大学が提供する保証人制度を利用できる可能性があります。また、サービス料は発生しますが、保証人代行会社の利用も選択肢の一つです。
銀行口座を開設していること
家賃の振込みや光熱費の支払いには、韓国の銀行口座が必要です。銀行口座は外国人登録証を準備することで開設でき、韓国の主要銀行(KB国民銀行、新韓銀行、ウリ銀行)などで手続きが可能です。なお、外国人登録証がない場合は銀行口座を開設できないため、早めに取得の準備を進めましょう。
留学期間に応じた賃貸契約期間であること
韓国の賃貸契約期間は、一般的に1~2年間です。そのため、留学期間と賃貸契約期間が一致しない場合もあります。ただし、韓国では留学生や短期滞在者向けに半年契約が可能な物件もあるため、ご自身の留学期間に適した物件を選ぶことが大切です。

韓国留学生が賃貸契約する際に必要な書類
韓国への留学生が賃貸契約をする際には様々な書類が必要です。まず、身分証明として外国人登録証の原本の提示が求められます。
加えて、留学生であることを証明するための学生証や在学証明書、家賃の支払い能力を示す銀行残高証明書、保証金納付証明書などもご準備ください。保証人が必要な物件では、保証人本人の書類、保証会社や大学に関する書類の提出も必要となります。なお、必要書類は物件によって異なるため、契約前に不動産会社や大家に確認して早めに準備しておくことをお勧めします。
韓国留学生が賃貸契約する手順
1.物件探しとし下見
はじめに住みたいエリアや家賃、部屋タイプなどの希望条件を明確にし、不動産仲介業者や韓国の不動産アプリを通じて物件を探しましょう。気になる部屋があれば候補をいくつか挙げ、必ず下見を行ってください。アプリやインターネットの写真だけでは確認できない、日当たりや周辺環境、騒音、部屋の設備などの状態を現地で確認することが大切です。
2.契約条件の確認と交渉
入居したい物件が決まったら、保証金や家賃、管理費、契約期間などを確認しましょう。韓国では、家賃や契約条件の交渉が一般的に行われており、入居時期や契約期間を調整することでより良い条件で契約できる可能性があります。また、家具や家電の有無、修理責任範囲についても事前に確認しておくと安心です。
3.契約書の確認と署名
契約書の内容は必ず確認し、不明点があれば遠慮せず質問しましょう。特に、保証金や家賃の金額と支払方法、契約期間、契約解除や更新の条件、保証金の返還条件、修繕義務の範囲は慎重に検討と確認が必要です。契約書は韓国語で作成されることが多いため、不明点は不動産仲介業者や通訳が可能な知人に確認し、十分に納得したうえで署名をしてください。
4.入居前の部屋の状態確認と入居後の手続き
入居前には壁や床の傷、家電の不具合など部屋や設備の状態を確認し写真に残しておくことが大切です。これは、退去時に保証金返還トラブルを防ぐための有効な証拠となります。なお、確認時は家主や仲介業者と一緒に行うと、より正確に把握ができます。
入居前の状態確認と保証金の支払いが完了した後、家主から鍵を受け取り入居を開始します。ガスや電気、水道の契約は入居後にご自身で手続きする必要がある場合が多いため、早めに対応しましょう。
韓国の賃貸選びにおすすめのエリア・相場
韓国留学中の住居を探す際は、大学へのアクセスや生活環境を重視して選ぶのがおすすめです。ソウルの新村(シンチョン)や梨大(イデ)、弘大(ホンデ)エリアは特に留学生から人気があります。新村・梨大エリアには、延世大学や梨花女子大学、西江大学といった名門大学があり、ワンルームの家賃相場は6万~16万円程度です。梨大に比べて新村エリアは古い物件が多いため、家賃相場がやや安くなっています。一方、弘大エリアはカフェや飲食店が多く賑やかで、ワンルームの家賃相場は6万~8万円程度です。
江南(カンナム)エリアは、ビジネス街やショッピングモール、有名大学や学習塾などの教育機関が集まる地域です。高級住宅街も多く、交通の便が良い点も魅力と言えます。ただし、ワンルームの家賃相場は約8万~11万円程度と比較的高めです。また、建国大学や世宗大学が近い建大入口(コンデイプク)エリアは物価が安く、ワンルームの家賃相場は5~6万円程度に設定されています。建大入口エリアは学生街として知られ、韓国の若者や留学生に人気のある地域です。
韓国での賃貸物件探しの方法・コツ
不動産仲介業者を直接訪問する
韓国で物件を探すもっとも簡単な方法は、不動産仲介業者を直接訪問することです。サイト上に掲載されていない物件情報も得られるため、希望に合う物件が見つかりやすくなります。特に、学生街周辺の業者は学生向けの物件を多く取り扱っており、ワンルームやオフィステル、コシウォンなど幅広い物件タイプから選ぶことができます。ただし、同じ物件でも業者によって条件が異なる場合があるため、複数の業者を比較したうえで契約を決めましょう。
韓国の不動産アプリを利用する
韓国の主要な不動産アプリ(チクバン、タバン、ネイバー)を併用することで、より多くの物件情報を確認できます。通知機能をオンに設定することで、新しい物件が掲載された際にすぐ確認できるのも魅力の一つです。検索の際は、フィルター機能を活用して予算や立地、設備などの希望条件を正確に設定しておきましょう。具体的な条件を入力することで、希望の物件が見つかりやすくなります。
エージェントを利用する
韓国入国前に住居を確保しておきたい方は、エージェントを利用した物件探しがおすすめです。日本語でのサポートを受けられるため、初期費用や契約条件についても丁寧に説明してもらえます。ただし、エージェントの利用には手数料が別途発生する場合が多いため注意が必要です。そのため、エージェントを利用する場合でも不動産サイトやアプリを併用して物件を探し、比較・検討したうえで決定すると安心です。
韓国留学生が賃貸契約時によく遭うトラブル・注意点
保証金の返還トラブル
賃貸契約終了時には、保証金の返還が遅れたり、全額が返還されなかったりする場合があります。修繕費や家賃の未払いを理由に差し引かれることが多いため、入居時には室内の状態を詳しく記録し、写真を撮影して証拠を残しておくことが有効です。
契約条件に関するトラブル
韓国語で作成された契約書を正確に理解できず、契約内容を誤って解釈してしまうケースも少なくありません。さらに、契約内容が口頭で伝えられただけで、契約書に反映されていなかったというケースもあります。そのため、契約書に署名する前には、必ず韓国語に堪能な人のサポートを受けて内容を十分に確認することが重要です。
修繕費負担のトラブル
部屋の設備が故障した際、修繕費を誰が負担するのかをめぐってトラブルとなるケースがあります。家主と入居者のどちらが、どの範囲を負担するのかについては契約書をよく確認しましょう。また、管理費に含まれる項目と別途負担すべき項目を明確にしていないと、費用の負担をめぐってトラブルに発展する可能性があります。修繕費と同様に、管理費や光熱費の内訳も事前に把握しておくことが重要です。
その他にも、ゴミ出しの方法や喫煙ルール、騒音問題など様々な生活上のトラブルが想定されます。韓国の居住文化や生活マナーについて事前に調べておくことで、トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。