日本人が韓国で永住権を取得する方法は?取得条件や徴兵制度について解説
更新日 : 2025/10/28
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韓国永住権取得の基本情報
韓国の永住権とは、外国人が韓国に永住できる権利を指します。永住権を取得するには永住ビザ(F-5)を申請する必要があり、承認されると長期間にわたる韓国での滞在が認められます。永住ビザには就労ビザのような活動制限がなく、会社員、自営業、アルバイトなど働き方や職種を自由に選ぶことができます。また、韓国滞在中は韓国人と同様に、医療保険や国民年金などの社会保障を受けることも可能です。
韓国の永住権は「帰化」と同様に、長期的に韓国で生活できる資格ですが異なる制度です。永住権は日本国籍を保持したまま韓国での永住が認められる在留資格であるのに対し、帰化は在留歴などの一定の条件を満たした外国人が韓国国籍を取得する制度です。なお、永住権には在留期間の制限はありませんが、韓国を出国してから2年以上が経過すると、ビザが自動的に失効するため注意が必要です。また、滞在中に出入国管理法を違反した場合は、永住権が取り消される可能性もあります。
韓国永住権の種類
一般永住権(F-5-1)
この在留資格は、駐在ビザ(D-7)や専門職ビザ(Eビザ)、居住ビザ(F-2)などでの在留歴があり、韓国に5年以上滞在した方が申請できるものです。他の永住権と比べて取得しやすく、最も代表的な永住権とされています。申請には、一定の韓国語能力と所得要件を満たす必要があります。具体的に、前年度の所得が国民総所得(GNI)の2倍以上であること、韓国社会統合プログラムの修了、またはTOPIK(韓国語能力試験)3級以上の合格証明書の提出を求められます。加えて、犯罪歴に関する審査も厳格であり、たとえ交通違反など軽微な前科であっても、審査に影響する可能性が高いため注意が必要です。
結婚移民による永住権(F-5-2)
この在留資格は、韓国人と結婚している結婚移民ビザ(F-6)の所持者が申請できるものです。永住権(F-5-2)を取得するには、F-6ビザを利用して韓国に2年以上滞在していることに加え、申請者本人または配偶者の所得や財産などをもとにした生計維持能力の証明が必要です。結婚移民ビザ(F-6)と比較して、韓国語能力や経済力などの追加要件があり、審査もより厳格になります。なお、永住権取得後は、万が一配偶者との婚姻関係が解消された場合でも、永住資格は継続して保持されます。
高額投資家向けの永住権(F-5-5)
この在留資格は、高額な投資家向けの永住権(F-5-5)であり、申請時には投資実績や雇用証明に関して厳格な審査が行われます。申請には、韓国の企業に約50万ドル以上を投資し、5人以上の韓国人を正社員として6か月以上雇用していることが必須条件です。さらに、投資後に韓国に5年以上滞在していることも求められます。また、滞在中は投資を継続する必要があり、投資の引き上げや雇用者数の減少があった場合には、永住資格が取り消されたり、申請が拒否されたりする可能性があるため注意が必要です。
点数制永住権(F-5-11)
この在留資格は、科学、経営、教育、文化芸術、スポーツなどの特定分野で優れた実績を持つ方を対象とした永住権です。点数制永住権(F-5-11)を取得するには、「必須項目」と「選択項目」の合計点と必須項目の最低点を組み合わせて、所定のポイントを満たす必要があります。選択項目では、年収や学歴、韓国での滞在年数などが採点され、必須項目では、特許の取得や国際的な学会での受賞などにより加点されます。他の永住権と異なり、特に学歴、職業、所得といった分野での実績が評価されるため、専門職や高所得者にとって申請しやすい在留資格といえます。申請時には専門分野での実績を証明する書類が必要となるため、受賞歴の証明書や推薦状などを事前に準備しておくことをお勧めします。
韓国永住権の取得条件
年齢制限と健康状態
韓国の永住権には、年齢制限は設けられていません。ただし、60歳以上の方が結婚移民による永住権(F-5-2)を申請する場合、所得要件や韓国社会統合プログラム修了証の提出が免除されるなどの優遇措置があります。また、永住権の審査では健康状態も重視されます。特に、結核などの伝染性疾患や重度の慢心疾患がある場合、審査に影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
韓国語能力
韓国に永住するためには、韓国文化への理解と韓国語能力が不可欠です。永住権を取得するには、韓国語能力を証明するために韓国社会統合プログラムの修了証が求められます。このプログラムは、韓国語能力の向上と韓国社会への理解を支援する制度で、全5段階のコースが用意されています。すべてのコースを受講し、最終の総合評価試験に合格すると修了証が発行されます。ただし、申請する永住権の種類によっては求められる韓国語能力や手続きが異なり、韓国社会統合プログラムの受講が免除される場合もあります。そのため、申請前にご自身が該当するビザの審査要件を十分に確認しておくことが重要です。
所得要件
永住権を取得するには、韓国の前年度における1人あたり国民総所得(GNI)を基準とした所得要件を満たす必要があります。取得を希望する永住権の種類によっては、基準額の2倍以上の年収が求められることもあります。例えば、2024年度の場合は最低でも4,473万ウォンの年収が必要とされており、この条件を満たさない場合は申請が拒否される可能性が高いです。ただし、一般永住権(F-5-1)については、申請者本人の年収だけでなく、保有する資産や家族の収入によって条件を補完することが認められる場合があります。一方、点数制永住権(F-5-11)は、年収のほかに学歴、職歴、韓国語能力など複数の項目による合算で審査される点数制度を採用しているため、年収のみで判断されるわけではありません。
犯罪歴の有無
韓国の永住権を申請するうえで、犯罪歴の有無は非常に重要な審査項目となります。特に重大な犯罪歴がある場合は審査に大きく影響し、過去5年以内に犯罪歴がある方は申請が却下される可能性が高いです。また、3回以上の飲酒運転や詐欺などにより実刑判決を受けた方も対象となるため注意が必要です。さらに、犯罪歴に関して虚偽の申告を行った場合には、永住権の申請が拒否されるだけでなく、韓国への入国自体が制限されるためご注意ください。永住権を取得した後でも、韓国国内で前科がついた場合には永住ビザが取り消しとなりますので法令の遵守が求められます。
永住権を取得したら徴兵される?
韓国の徴兵制度は、韓国国籍の成人男性にのみ適用されるため、韓国の永住権を取得している日本国籍者は対象外です。ただし、帰化によって韓国国籍を取得した場合は、満18歳から36歳未満の男性であれば兵役の対象となります。また、日本国籍者であっても韓国で出生した方は徴兵義務が発生します。ただし、6歳以下で韓国から出国し、17歳まで外国に居住し続けていた場合は在外国民2世とみなされます。この在外国民2世に該当し、かつ外国での居住実態が確認されれば、兵役の延期や徴兵の免除が認められる可能性が高いです。なお、外国で出生した二重国籍者については、満18歳までに韓国国籍を離脱していた場合は徴兵の対象にはなりません。
韓国永住権申請に必要な書類
韓国の永住権を申請する際は、パスポートなどの必要書類をあらかじめ準備してください。
以下では、一般永住権(F-5-1)、結婚移民による永住権(F-5-2)、高額投資家向けの永住権(F-5-5)、点数制永住権(F-5-11)の申請に必要な書類について紹介します。
一般永住権(F-5-1)の必須書類
一般永住権(F-5-1)の申請に必要な書類は以下の通りです。
- 統合申請書
- パスポートまたは外国人登録証
- 顔写真1枚(カラー、白背景、サイズ3.5cm×4.5cm)
- 在職証明書
- 所得証明書
- 預金残高証明書
- 身元保証書
- 韓国社会統合プログラム履修証明書
- 犯罪経歴証明書
- 滞在先を証明する書類(賃貸契約書など)
結婚移民による永住権(F-5-2)の必須書類
結婚移民による永住権(F-5-2)の申請に必要な書類は以下の通りです。
- 統合申請書
- パスポートまたは外国人登録証
- 顔写真1枚(カラー、白背景、サイズ3.5cm×4.5cm)
- 韓国人配偶者との婚姻関係証明書
- 戸籍謄本
- 所得証明書
- 在職証明書
- 預金残高証明書
- 韓国社会統合プログラム履修証明書
- 滞在先を証明する書類(賃貸契約書や公共料金の支払い領収書など)
- 犯罪経歴証明書
高額投資家向けの永住権(F-5-5)の必須書類
高額投資家向けの永住権(F-5-5)の申請に必要な書類は以下の通りです。
- 統合申請書
- パスポートまたは外国人登録証
- 顔写真1枚(カラー、白背景、サイズ3.5cm×4.5cm)
- 身元保証書
- 投資証明書または事業者登録証
- 雇用契約書
- 滞在先を証明する書類(賃貸契約書など)
点数制永住権(F-5-11)の必須書類
点数制永住権(F-5-11)の申請に必要な書類は以下の通りです。
- 統合申請書
- パスポートまたは外国人登録証
- 顔写真1枚(カラー、白背景、サイズ3.5cm×4.5cm)
- 在職証明書
- 身元保証書
- 滞在先を証明する書類(賃貸契約書など)
- 納税証明書
- 専門分野の実績証明書(学位証明書、研究実績証明書類、推薦書など)
日本語で作成した証明書(犯罪経歴証明書や戸籍謄本)には翻訳が必要となるため、あらかじめ外務省でアポスティーユ認証を受けて韓国語翻訳と翻訳公証を添付してください。なお、高額投資家向けの永住権および点数制永住権の申請者については、犯罪歴証明書の提示や韓国社会統合プログラムの受講が免除されます。ただし、審査官の判断により提出を求められる場合もあるため注意が必要です。
韓国永住権の申請方法・手順
1. 永住権の申請要件を確認
韓国の永住権を取得するには、通常2年から5年以上の韓国での在留歴が求められます。また、申請する永住権の種類によって申請要件が異なり、韓国語能力や所得などの証明が必要です。永住ビザの申請要件を一つでも満たしていない場合は発行されないため、申請を行う前に最寄りの出入国管理事務所の公式ウェブサイトで必ずご確認ください。
2. 必要書類の準備
永住権を申請する際は、パスポートや統合申請書などの必要書類を準備しましょう。申請する永住権の種類によっては、共通書類に加えて追加の書類が求められる場合があります。また、韓国社会統合プログラムの修了証が必要な場合は、余裕をもって早めに受講を開始することをお勧めします。その他に、犯罪歴証明書や所得証明書などの各種証明書類を提出する際は、必ずアポスティーユ認証を受けて韓国語翻訳を添付してください。
3. 必要書類を出入国管理事務所に提出
必要書類を全て揃えて、最寄りの出入国管理事務所の窓口に提出してください。書類提出後は、所定の審査が行われます。なお、出入国管理事務所への訪問は予約制となっているため、事前に韓国法務部の公式ウェブサイト「ハイコリア(Hi Korea)」で訪問予約を行ってください。
4. 出入国管理事務所で永住証を受け取る
審査に問題がなければ永住証が発行されます。発行後は出入国管理事務所を訪問し、窓口で永住権を受け取ってください。
韓国永住権取得にかかる費用・審査期間
申請費用
韓国の永住権の取得には、在留資格変更手数料と永住証の発行手数料がかかります。資格変更手数料は20万ウォン、永住証の発行手数料が3万5,000ウォンとなります。手数料は、出入国管理事務所の申請窓口で収入印紙を用いて納付する必要があり、クレジットカード決済には対応していませんのでご注意ください。収入印紙は、出入国管理事務所で購入可能です。加えて、犯罪経歴証明書や所得証明書など追加書類の準備に伴う費用が発生する場合もあり、申請者の状況や滞在目的に応じて異なります。
審査期間
永住権の審査には、通常6か月から1年程かかります。書類の不備や追加書類を求められた場合は、さらに時間を要するため早めに申請手続きの準備をしましょう。特に、韓国国内での犯罪歴や国民保険の滞納歴などの滞在記録は厳しく審査されるため、事前に確認しておくことをお勧めします。また、永住権の申請中は現在保有している在留資格の有効期限を確認し、必要に応じて延長手続きを行ってください。
韓国永住権を取得するメリット
在留期間の延長が不要
通常の韓国ビザは、取得後1年から3年ごとに在留期間を延長する必要がありますが、永住権は無期限で滞在できるため延長手続きは不要です。ただし、永住者は10年ごとに永住証の更新が求められるため、取得後は忘れずに手続きを行ってください。
就労活動の自由度が高い
韓国の就労関連ビザは目的や職種に応じて発給されるため、就労や活動内容に制限が設けられています。一方、永住者は韓国国民と同等の労働活動が認められるため、就労許可を申請せずに職業を自由に選択できます。韓国国内の一般企業への就職や、フリーランスで活動することも可能です。その他にも、投資ビザ(D-8)を取得せずに韓国で法人を設立し、事業を展開することも認められます。
再入国許可の取得が不要
韓国では2022年より「みなし再入国許可」制度が導入され、出国日から1年以内であれば再入国許可証を取得せずに再入国が可能となりました。なお、永住者の場合は出国日から2年以内であれば、再入国許可を取得せずに韓国への再入国が認められます。ただし、出国から2年以上が経過すると、永住権が取り消される可能性があるためご注意ください。
韓国永住権取得時の注意点・失敗例
永住権取得時の注意点
韓国の永住権は種類によって、取得要件(滞在年数や年収など)が異なるため正確に把握しておくことが大切です。要件を満たさずに申請した場合は、要件不足として却下される可能性があるためご注意ください。また、永住権の中には犯罪経歴や韓国語能力の証明が免除される種類があります。ただし、韓国語能力については審査官の判断により、補足資料として語学証明書の提示を求められます。そのため、免除が適用される永住権を申請する場合でも、あらかじめ語学証明書を取得しておくことをお勧めします。
永住権取得時の失敗例
韓国で永住権を取得するには、申請要件を全て満たしたうえで必要書類を提出しなければなりません。特に、韓国での滞在歴や必要な年収は全ての永住権において厳しく審査されます。例えば、一般永住権(F-5-1)の取得には韓国での5年以上の在留歴が求められますが、この条件を満たしていない場合は不許可となります。そのため、在留歴に不安がある方は事前に確認し、正確に把握したうえで申請を進めるようにしましょう。また、申請時に書類の不備や、有効期限が切れた証明書類を提出して不許可となるケースも多いため注意が必要です。発行や翻訳に時間を要する書類もあるため、早めに準備しておくことをお勧めします。
韓国永住権取得後にやるべきこと
永住証の更新
永住権を取得した後は、永住証を申請して受け取る必要があります。原則として永住ビザ(F-5)には有効期限はありませんが、永住証は10年ごとに更新および再発行を行わなければなりません。永住証の更新は、有効期限の満了日までに行う必要があり、手続きが遅れた場合は罰則が科されるためご注意ください。永住証の更新手続きには、更新および再発行申請書、パスポート、手数料が必要となります。更新処理にはおおよそ3週間から1か月程度かかりますが、繁忙期にはさらに時間を要することがあります。そのため、有効期限の2か月前までに申請しておくことをお勧めします。また、永住権申請時に犯罪経歴証明書を提出していない場合は、更新時に必要となるため事前に準備しておきましょう。
社会保険への加入
韓国に永住する場合は、現地で国民健康保険および年金保険に加入しなければなりません。これらの保険の加入方法は、会社員、自営業または無職かによって異なります。会社員の場合は勤務先が加入の手続きを行うため、ご自身で申請する必要はありません。一方、自営業または無職の方は、最寄りの国民健康保険公団および国民年金公団に直接訪問し、加入手続きを行ってください。登録後は、自宅に保険料の通知書が送付されるため、毎月忘れずに納付しましょう。なお、会社員の場合は雇用形態によって、雇用保険や労災保険などへの加入が求められることもあります。